ソース:
Buy, Sell or Hold Tight? (IndexUniverse)
Avoiding Hidden Index Risks (IndexUniverse)
ひさしぶりに、読んでいてショックを受けた記事です。
リスク許容度の決定といえば、梅ランの「
最悪の事態がおこったときの損失額を計算する方法とは!?」にあるように、
市場の最悪の事態を想定するということは、
投資金額×{期待リターン−(2×標準偏差)}
の損失額を覚悟するということになります。
が、基本的な手法でした。けれどもソース記事によると、リスク許容度の決定には標準偏差ではなく
期待ショートフォール
を使えということです。
期待ショートフォール (Wikipedia)
数理ファイナンスにおいて、期待ショートフォール(きたい〜、英:Expected shortfall, ES) は、確率変数 X に
関してある閾値 μ を超える部分の期待値。確率変数 X を損失額とし閾値 μ を信頼水準 1-α %における VaR と
すれば、損失がVaRを超える場合の平均損失となる。
ものすごくわかりにくい説明ですが、
正規分布のグラフで、2 σや 3 σで区切った縦線の「外側部分=テールリスク」の平均値を指します。
リスクの許容度を標準偏差で計算すると、グラフの縦線部分でリスクを算出してしまい、その外側は無視されます。
当然、期待ショートフォールを使ったほうが、より保守的にリスク許容度を計算することができるわけです。
期待ショートフォールがいつごろ考え出されたかわかりませんが、少なくとも97年ごろに知られていました。
それから 10 年以上もたっているのに、なぜ期待ショートフォールが取り上げられてこなかったのでしょうか?
(少なくとも、orz の巡回先のブログで見かけた記憶はありません)
ググったところ、期待ショートフォールの精度を上げるには、テールリスク部分のデータを十分に収集する必要があることが
問題になっていたようです。もともと発生頻度が少ないから「テール」なのに、そのテール部分のデータが大量になければ
計算できないというのは、困ったちゃんだったのでしょう。
ソース記事に引用されていた期待ショートフォールによる損失額
S&P 500 に 1 万ユーロ投資した場合、四半期内で最悪 1% の事態に陥ると平均 2626 ユーロの損失が想定されます。
TRJ/CRB はコモディティのインデックスです。
条件 | S&P 500 | Euro Stoxx 50 | TRJ/CRB |
1 日に起きるワースト 5% | 131 | 297 | 273 |
1 日に起きるワースト 1% | 754 | 507 | 334 |
1 か月に起きるワースト 5% | 1014 | 1448 | 1136 |
1 か月に起きるワースト 1% | 1401 | 2120 | 4894 |
1 四半期に起きるワースト 5% | 1760 | 2426 | 4859 |
1 四半期に起きるワースト 1% | 2626 | 3536 | 4883 |
最後に、期待ショートフォールは正規分布を前提とした(べき乗分布派から批判される側の)アイディアです。
黒い白鳥さんが舞い降りたとき、どの程度役立つかはわかりません。